2018年以降、自動車業界ではセキュリティ強化が加速しています。国産車・輸入車を問わず、自社で整備を完結するためには専門的な知識や情報が必要です。入庫前に以下の点を確認し、万全の体制を整えることが重要です。
- 手持ちの診断機がどのメーカーで、どの車種に対応しているかを把握すること。
- 手持ちの診断機がどの範囲で有効かを理解し、適切に活用すること。
- 自社で対応できない車両を引き受ける他社工場の有無を確認すること。
- リセットや再設定が必要な場合、各ディーラーの条件や対応可否を確認すること。
セキュリティ機能の変化と対応
VWグループでは、2019年から「SFD」というセキュリティ機能が導入されています。例として、GOLF Ⅷではエンジンオイル交換時にオイルインターバルリセットを行うためにSFD解除が必要です。GW、エンジン、ボディ、メーターなどの各ユニットのセキュリティ解除がなければ、設定リセットや再学習ができません。ディーラーでは、メカニック個人ごとにアクセス権を管理し、作業内容を追跡可能にしています。
FCAグループの車両は「セキュリティゲートウェイモジュール(SGW)」を採用しており、ゲートウェイを通る信号にセキュリティ機能を持たせています。この解除を行わなければ、外部診断機を用いたリセットや設定変更がすべてブロックされます。
2022年以降のモデルでは、セキュリティがさらに強化されています。
主なメーカーのセキュリティ要件
SFD/SFD2 年式により異なる。
SGW 外部診断機からのアクセスをGWモジュールでセキュリティ制御。
現時点では診断・メンテナンスは制限なく可能。ただし、プログラムアップデートやコーディングにはセキュリティファイルが必要。
2019年Sクラス(223)モデルから始まり順次フルモデルチェンジやマイナーチェンジ時の対象となるモデルに対してメーカーサーバーからのセキュリティ証明書の取得が必要。それに基づいて各ユニットの設定変更や再設定などが可能。2024年初頭では主にDOIPプロトコルを使用したモデルのみ(223,EQS,EQE,206他)。
今後への備え
これらのセキュリティ要件は、オイル交換のような基本作業にも影響を与えます。正確なメンテナンス記録を残すためには、セキュリティ解除が不可欠です。また、OBD車検との関連性が高まる可能性もあり、各メーカーやディーラーに問い合わせて最新情報を把握する必要があります。整備業界の変化に柔軟に対応し、顧客から信頼される体制を築くため、技術力と情報収集力を磨き続けましょう。
(西山)