整備業界には、今や避けることが出来ないコーディングやプログラミングがあります。およそ四半世紀前から各メーカーそれぞれの方法で始まりました。以前のシステムでは、車載コンピューターが故障した際でも、初期設定・イモビライザーの同期など簡単な作業で完結していました。
1996年に米国で施行されたOBD2法は、それまでの車載コンピューターシステムに関する扱いを根底から変えてしまう内容でした。
メーカー供給のECUには、初期起動プロセス以外のデータは入っておらず、車両個々の仕様に合わせたプログラムをインストールし、許可された仕様に合わせて個々の設定を行う(=コーディング)複雑なシステムになったのです。
各ディーラーはメーカーから提供された純正診断機を使ってメーカーサーバーに接続し、適切なデータで作業を行います。2022年現在、日本国内のアフターマーケット・ワークショップではメーカーサーバーへのアクセス権を取得するのが非常に困難です。たとえ取得できても維持管理が非常に面倒ですし、複数メーカーの情報が必要となると費用は高額になります。不可解なトラブルはディーラーへ持ち込めば原因解明できますが、それでは利益は得られないでしょう。
各汎用診断機にはECU交換を可能とする機能を搭載したモデルもあり、自社で完結することも可能なモデルもありますが、それらはメーカーサーバーの自動機能が使えないのがネックです。コーディングやプログラミングの内容が解らずに選択・実行すると、完結どころか機能しなくなる可能性も考えられます。
また、電源安定化充電器を使わずに作業を行うのは危険であり、これは高性能診断テスターの導入前に用意すべきです。
いずれにしても、事前の情報収集を怠ると直せるものも直せなくなります。車両情報を事前に把握し、理解したうえで適切に設定を反映させることが今後の車両整備に必要なことです。自動ブレーキや自動運転と様変わりしていくなかで一つでも設定を間違えると大変な事態を引き起こしかねません。困難な事でも挑戦し技能向上を図り、同業他社との交流で情報共有が大切なのです。皆様が、より正確な情報と正確な整備を行えるよう弊社でもサポートしていきます。
(西山)