政府は2050年までに達成する目標として『2050年カーボンニュートラル(炭素中立)宣言』を打ち出しました。これから本格的に脱炭素社会を実現していこうとするこの宣言に注目が集まりました。大気中にはCO2が存在します。地球温暖化の原因といわれる「CO2の排出量をできるだけ減らし、プラスマイナスゼロにすること」を目指す取り組みです。現在、電気自動車(EV)開発が進んでいますが、ガソリンエンジン車からEV社への移行にはかなりの時間がかかると思われますので、それまでの間、既存のガソリンエンジン車に対しての排ガス対策も不可欠です。
ポルシェは総合テクノロジー企業シーメンスと共同し、ガソリンに代わる合成液体燃料『eFuels』の研究開発を独自に推進しています。eFuelsとは再生可能エネルギー(地球資源の一部、太陽光や風力、地熱)を利用して二酸化炭素CO2と水素H2から製造される燃料です。これはいうなれば、新たな環境技術で脱炭素を後押しし、水素ガソリンの商品化でガソリンエンジン車とEVの共存を目指す取り組みなのです。クルマ好きには、音や振動といった「五感」を刺激するガソリン車は何と言っても魅力的です。それと遜色ない水素エンジンが開発されるとなれば、そこに未来を切り開くカギがあるかも知れません。
ポルシェが開発する水素ガソリンは、通常のガソリンに比べてCO2の排出が9割減るそうです。再生可能エネルギーで作った電気で水を電気分解してグリーン水素をつくります。その水素とCO2を化学的に合成してできるガソリンと同じ成分の燃料です。生産された水素ガソリンはガソリンエンジン車に使用でき、世界中で現役で走り回っているクルマもCO2が減り、さらに維持したいクルマを廃車にすることも避けられるので環境対策にも繋がります。
しかしその一方で課題もあります。電気から水素、水素から燃料に変換する場合のエネルギー損失が避けられずEVに比べてエネルギー効率は6分の1程度になり、同じ距離を走行するのに費用が膨らんでしまうのです。しかし将来のEV化にしても航空機や船舶には燃料油が必要で代替エネルギーの活用は必要と思われます。 国内では、自工会(日本自動車工業会)がカーボンフリーの合成燃料などの将来的な活用に取り組んでいます。今後ゼロエミッション車が普及するためには、充電ステーションや水素ステーションといったインフラ設備の整備やそれらの促進策が必要となります。官民含め日本全体で取り組む必要があり、政府の支援が絶対的に必要となるのですが、様々な課題があるのも事実です。
トヨタは自工会に協力するようで、直近では富士スピードウェイ24時間耐久レースにトヨタ自動車が開発中の水素エンジンで参戦し、過酷な環境下のレースで完走を果たしました。このように、カーボンニュートラルの早期実現を目標に掲げる大手企業が増えていくと思われます。ヒストリックカーから現行車両まで内燃機を搭載したクルマを大切に乗り続け維持することができる社会ーそんな未来が実現できそう、と期待も膨らみますね。