前回オシロスコープの紹介をしたところ問い合わせがあり、改めてその必要性を感じました 
 今回は、先々予定している整備トレーニングの講師の方から頂いた資料を、一部掲載します。

協力:(株)アサダ自動車商会 浅田純一様

アルファードMHN10W(平成17年式・走行79,400km)。高速の上り口などで加速するとエンジンチェックランプが点灯。しばらくそのまま点灯はするものの、サービスエリアに入りエンジンを停止し再始動時には消灯している。ユーザー自身は走行には問題ないと認識。認定中古車での購入で、その後チェックランプが点灯し、リーン異常検出ということでO2センサを交換した様子。ただしどの様な経緯で部品を交換されたかについては説明もなく、様子見と次々と部品交換で故障の原因追及には至らずに新規入庫となりました。

まずはスキャンツールにて自己診断機能による点検で、コードP0174リーン異常が検出されました。データモニタではO2センサは交換済みで正常に動いており、エアフロメータの波形診断に入ります(写真1)。 

写真1:整備前
写真2:整備後

一見、正常にみえますが、違和感がある波形です。アクセルを踏み込む時にも吹き上がりにもたつきを感じたため、目視点検したところ、汚損を確認。用剤にて洗浄した後の波形が写真2です。比べると明らかに違いが判ります。リーン異常が検出される要因は一応点検しますが、波形が、その原因を教えてくれ、不必要なことをする事がありません。整備書通りの診断手順を行っていたのではオシロスコープを使う意味がありません。この症状の場合、波形診断を進めるにあたり特定する方法があります。データモニタによる故障診断では細かい数値からあれこれと読み解く必要がありますが、オシロスコープを用いる事でユーザーに対してビジュアルに訴えることも可能です。どの様な診断機器を使っていくにも練習、訓練が不可欠なのですが、学ぶ場が少ないということも事実で、そのような場を創ることが急務かと思います。


リーン異常コードが確認されると『エアフロ?』とすぐに解決される一方、リーン異常という言葉にごまかされO2センサを交換してしまう事例の多いことに驚いています。
そもそもリーン異常が検出される要因に通常走行においてフューエルトリムが極端に増量側に補正される(2トリップ)ということが書かれていますが、燃料増量補正の結果、燃料噴射時間は数.ms(コンマミリセカンド)長くなります。これは空燃比が大きくなる(希薄混合気)ためにそうなるのですが、ネットなどのトラブルシューティング事例では“エアフロメータの交換で終了”と書かれているだけで、エアフロメータのどの部分がどうなるから増量補正され、リーン異常が検出されるというところまでは詳しく記載されてないことが多いようです。

右図は熱線式エアフロメータの回路図ですが、高校物理で習うホイートストン・ブリッジが原理です(日整連二級ガソリンテキスト参照)。


吸入空気により発熱抵抗体R1が冷やされ(抵抗値が下がる)、その結果生じたVKとVMの電位差を検出したコンパレータが制御部に電流を流すよう信号を送り、その電流によってR1が熱せられ(抵抗値が上がる)、同電位に戻るという仕組みです。常にこの繰り返しを続けているということですね。この発熱抵抗体に何らかの異常があれば、正しい電流の制御がなされていないため、空燃比に狂いが生じます。吸入空気量を計測する重要なセンサなので、当然と言えば当然です。アクセルを踏み込み加速しようとしても、エンジン回転数と吸入空気量のマッチングが悪いのでは正しい燃料制御が成り立ちません。今回の故障事例は、まさにその典型と言えるものです。