航空機事故が起きた時、その分析に欠かせないのがフライトレコーダーですが、その自動車版が「イベント・データ・レコーダー(EDR)」です。このEDRから、事故発生時のデータを読み出すツールが「クラッシュ・データ・リトリーバル(CDR)」です。近年では、国内の自動車メーカー、大手損保会社、科学警察研究所、警視庁などの警察組織でEDR、CDRを活用する動きがあり、官民問わず広がっています。

EDR(イベント・データ・レコーダ)

EDRは、車両に一定以上の衝撃が加わると衝突前後の車速、ステアリング操舵角衝突規模、アクセル開度、ブレーキ操作等、さまざまな情報を記録します。EDRデータの解析によって整備や修理の責任が明確になり、整備事業者の修理責任に影響を与える可能性があります。

米国と欧州では、今後、自動運転の普及を見据え、自動運転車両へのEDR搭載義務化を検討しています。2020年までに車両への記録装置搭載義務化を含む制度整備の方針へ向かっている様子です。先進安全技術のエーミング作業は必須で、作業結果の保存も必要になります。誤った作業が原因で事故が起きた場合、整備事業者が責任を問われる事態も想定されます。

CDR(クラッシュ・データ・リトリーバル)

目撃証言や車体の損傷状況の調査などの既存の事故調査に加え、EDRデータを使用することにより、より客観性の高い分析を行うことができます。しかし、EDRデータの分析には自動車の制御システムの知識と診断の経験が必要です。また、自動車事故調査の知識と経験、運動量保存の法則、物理学の知識、エンジニア用語を理解するための英語読解力も必要です。

こうしたEDRデータの解析技術や知識を習得するためには専門のトレーニングが必要です。BOSCHでは、CDRによる事故解析ができる『CDRアナリスト』の認定トレーニングも開催しています。

今後も自動車の技術は大きな変化が起きると予測されます。ADAS(先進安全運転支援システム)をはじめエーミング作業、CDRもその一つでしょう。

問題は、自動車の技術が高度に進化することで、メカニックが進化に追いつけない状況が生まれてしまうことです。自動車整備業においては、常に最新の情報、幅広い知識を習得し続けることが大切だと思われます。

参考資料画像:ボッシュ株式会社